膝の痛み:種類と症状、対策、予防とストレッチ
膝の痛みと一概に言っても、いろいろな症状があります。整形外科のお医者さんによると、大きく分けて、障害、外傷、加齢性変化の3つになるそうです。
(1)靭帯(じんたい)の障害
距離が短いマラソンでは痛くならずに、長距離だと痛くなるランナーは、靭帯の障害がいちばん疑われます。
これは、走り過ぎや負荷の掛け過ぎで、靭帯が炎症してしまったもの。ひざの外側が痛む「腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)」、ひざの内側が痛む「鵞足炎(がそくえん)」、ひざの前が痛む「ジャンパーひざ」などが有名です。
◆ひざの外側が痛む「腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)」
ランナーが特になりやすいのが、「腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)」。腸脛靭帯とは、骨盤にある腸骨とスネにある脛骨(けいこつ)を結ぶ長い人体で、これがひざの外側の骨とこすれあうことで炎症(痛み)が生じてしまいます。O脚の人が、特にこの部分の摩擦が起きやすい傾向とも言われます。
◆ひざの内側が痛む「鵞足炎(がそくえん)」
膝の曲げ伸ばしによって、ハムストリングや内転筋など三つの筋肉の腱(けん)が集まる鵞足(がそく)部分の周辺の筋肉の腱(けん)に繰り返し力が加わることで、炎症(痛み)が生じるものです。X脚の人に多く見られると言われます。
◆ひざの前(皿の周辺)が痛む「ジャンパーひざ」
ジャンプの繰り返しによって、膝蓋(しつがい、お皿のこと)の上下の靭帯に強い負荷がかかって起きる炎症(痛み)ですが、あまりランナーには見られません。
原因としては、整形外科医などによると、「どれも膝の使い過ぎが原因で、走り慣れていない人が無理をして炒めてしまう」ことが多くなっています。特に休みの時しか走らないようなランナーは注意する必要があるようです。
もしなってしまったときには、まずトレーニングを控え目にします。
そして、走った後にアイシングをする、30秒ずつ温水と冷水を交互にかけて血流を良くする、マッサージをするなど、日常的なケアを丹念に続けていけば、数か月で痛みが解消することも多いようです。
ステロイド注射で一気に炎症を抑える方法もあります。痛みが長引いて、悩んでいるようなら、ステロイド注射を一度試してみてもいいのでは、というアドバイスをする整形外科のお医者さんもいます。
(2)外傷
転倒や何かにぶつかって、膝を打ったり捻ったりし、半月板や靭帯を損傷して傷めた場合です。これはすぐに病院で診断、治療をうける必要があります。ひざの靭帯は、前・後・内側・外側の4つがありますが、一番損傷が多いのが内側のようです。
(3)加齢性変化
加齢によって、半月板や軟骨がすり減ってきて、変形性関節症が引き起こされることにより痛むことがあります。ランニングをしていなくても60代以上によく見られますが、膝の使い過ぎで40代ぐらいから、痛みが出る人もいます。ヒアルロン酸の注射がかなり有効です。
今では、膝の痛みにいろいろな治療法があるので、長引くようなら、どの場合でもお医者さんに相談してみるといいでしょう。
ランニングによって膝を傷めないようにするには、次のようなことが大事です。
◆普段からストレッチをして、筋肉をつけ、筋肉を柔軟に保つ
◆脚を地面に着地した時の衝撃を吸収する、クッション性の高いランニングシューズを選ぶ
◆膝への負担が少ない走り方を身につける
-速く走ろうとして、歩幅を大きくしすぎない(気持ちいい歩幅をキープする)
-前に出した脚が体のほぼ真下に来て体重を全て乗せてから、反対の脚を前に出すようにする(「体重移動で走るランニング」を参照)
◆無理をして、長い距離を走らない
膝を痛めないようにするには、まず筋力トレーニングやストレッチで、膝を支える筋肉を強くして、柔軟性を高めることが大事です。
<ストレッチ>
◆腸脛靭帯のストレッチ(1)
両足をクロスさせて立ち、上半身を前屈させ、手は地面のほうに伸ばす。そのとき、後ろにある脚の方に上半身を向け、後ろにある脚のひざの外側部分を意識する。
◆腸脛靭帯のストレッチ(2)
床に座って、片足は前に伸ばし、もう片足を膝を立てて、伸ばした足の外側に置く。上体を起こしながら、伸ばした足の膝の外側部分を伸ばすように意識する。
<筋トレ>
◆スクワット
◆レッグランジ
ランニング・シューズも大変大事で、クッション性のいい靴、自分の足に合ったインソールのものを選ぶ必要がありますが、整形外科では、障害や足の形に合わせたインソールを作ってくれます。
例えば、О脚傾向で腸脛靭帯炎の人は、インソールで脚の外側を少し高くすれば痛みを緩和することができる場合があります。反対に、X脚傾向で鵞足炎(がそくえん)の人は、内側が高いインソールを試すことができます。
膝や脚に何らかの痛みが発生したら、早めに整形外科にかかりましょう。正しい診断を受け、正しい対策をすれば、多少のトラブルがあってもランニングを続けることは可能です。「スポーツ整形外科」と検索すれば、多くの病院がでてきます。